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最高裁判所第二小法廷 昭和32年(オ)1019号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人中山淳太郎、同竹谷勇四郎の上告理由第一点第一について。

所論は、控訴審裁判所は民事審訴訟法第五四八条所定の裁判をすることができないと解すべきであるから、原判決が強制執行停止決定取消をなしたのは、法令違反の違法があるという。しかし、第一審裁判所がなした強制執行停止決定認可の裁判は、本件判決確定に至るまでの暫定的効力のものであることは所論のとおりであるにしても、控訴審判決において、その言渡後直ちに強制執行を続行せしめるのを適当とするときは、右裁判を取消す必要があることに徴すれば、控訴審裁判所も民事訴訟法第五四八条所定の裁判をなすことができると解すべきであるから、所論は採用できない。

上告理由第一点第二、第三について。

所論第二は、原判決が上告人と訴外本城顕寿との本件物品の譲渡を仮装譲渡と認定して上告人の請求を棄却したのは当事者の主張しない事実に基いて判決した違法がある。又第三として、原判決が本件の譲渡を仮装のものであることの徴憑として掲げた諸事由をもつてしては、これを仮装と認むべき理由とならず、結局原判決は経験法則違反の違法ありというにあるも、原判決は、上告人と訴外本城顕寿との間における本件物品の譲渡行為自体を認めるに足る証拠がない旨を判示し(右認定は原判決挙示の証拠により首肯することが出来る)、もつて上告人の請求を排斥したのであつて、右譲渡行為の存在を認めて、それが通謀虚偽表示である旨を判示したものではないから、所論は前提を欠き、採用に値しない。

上告理由第二点について。

所論は、いずれも原判決は仮装譲渡行為ありと認定したとして、その認定を非難し、又はその仮装でない所以を主張するものにすぎない。しかし、前示の如く原判決は、単に上告人と訴外本城顕寿との間には本件物品につき譲渡行為がなかつたことを認定して、上告人の主張を排斥しているもので、上告人主張の公正証書を作成したのは、譲渡行為があつた如くするために作つたものにすぎない旨を認定して居るものであるから、仮に上告人主張のような事実があつたとしても、結局これらは、いずれも判決に影響を及ぼさない法令違反を主張するものに外ならない。所論は適法な上告理由とならない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

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